スリル・ミー2023を終えて&配信のすすめ(11/5追記)

(11/5:ヤマコー感想追記しました。)

 

ミュージカル「スリル・ミー」2023、全公演お疲れ様でした!!

そして全ペア配信決定、本当にありがとうございます!!

 

ツイートでのオタク特有の軽いノリの文章だとニュアンスがうまく伝わらずに誤解されてしまった部分もあるように感じたため、改めて簡単な所感をちゃんと文章として書いてみます。

(作品の布教というよりも、過去に観劇していたりでこの作品をすでにある程度知っている方向けの文章です。ミリしらの方の布教には向きません。)


文章の性質上、物語のネタバレを含んでいるため、作品未見の方はできれば読まないでいただきたいですが、
「配信でどのペアを買うかの参考にしたい!」という気持ちでこの記事を開いてくださった方のために、それについての結論だけ先に書いておきます。

 

演技や歌声や顔が好きな役者さんがいるペア、もしくは以下の各ダイジェストを見て1番興味を惹かれたペアを買ってください!

youtu.be

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スリルミー初見の機会は人生に1度だけ。出会いを大切にしていただきたいです。

 

 

前書きとして、私は「スリル・ミーがミュージカルの中で1番好き!」という方達に比べるとこの作品を熱心に見てきたわけではないため、違うよ!と感じられる部分もあるかもしれませんが、あくまで私個人の「スリル・ミー」観として読んでいただければ幸いです。

 

 

2019年に初見してから、今まで私が見たことのあるペアは下記の6ペアです。

【私・彼(敬称略)】
松下洸平柿澤勇人(2019)
●成河・福士誠治(2019、2021配信)
●田代万里生・新納慎也(2021配信)
松岡広大山崎大輝(2021)
木村達成・前田公輝(2023)
尾上松也・廣瀬友祐(2023)

 

それを通して、この作品の数ある魅力のうちの一つは、「”私”と”彼”のパワーバランスが終盤で逆転する点」にあるなと感じました。

 

客観的に見ると、家柄や成績は良いのにどこか幼くてあか抜けない”私”を、スマートで人気者な”彼”がどういうわけか気に入って手元に置いてやってる、みたいな構図。

そうやって”私”のことを見下していた”彼”が”私”に喰われて破滅する、その結末。

 

私は2021年に松岡山崎ペアを見た時に、体格や、作中の2人の関係性から、「ああスリルミーってこういう作品だったのか」ということを初めてスッと自然に理解することができたため、その印象のままなら初見には松岡山崎ペアをおすすめしたいです。
が、噂によると今年は松岡私が2年前よりもかなり強くなっていて、2人の関係性が変化しているとのことなので、もしそうなら今年の松岡山崎ペアは「パワーバランスの逆転」という形からは外れるのかなあと思います。

(今年のこのペアは未見なので、配信で見てから改めて印象を追記しようかなと思います。)

 

また、木村前田ペアは、物語の序盤から2人のパワーバランスにあまり差はなく(ともすれば”私”の方が終始強く感じる回もあるくらいで)、かつては対等で良好な友人関係を築いていた2人のようにわたしには感じられたため、こちらも「パワーバランスの逆転」といった形からは外れるのかなと思います。
お互いを求めあっていることは確かなのに(それが愛に因るものかどうかは解釈によるけれど)、それゆえお互いを傷つけ続け、だんだんと崩れていって、「九十九年」で決定的に2人の関係性が壊れる、という点が、新鮮な描き方に感じました。

 

尾上廣瀬ペアは、一見「パワーバランスの逆転」という形には則ったペアのように思いますが、それ以前に何よりも廣瀬彼が怖すぎる。
”彼”にありがちな圧力を与えてくるモラハラ気質な怖さとも違う、

まばたきを全くしなくて終始目がガンギマリで、感情が爆発するポイントやセリフ回しがどれも不規則で読めなくて、人間の感情が通じない未知の生物と出会ってしまったかのような怖さ。頭で考えるよりも先に本能が危険を知らせてくるタイプの恐怖を廣瀬彼からはずっと感じていました。
ああいった凄味のある表現をできるのは心から凄いと思います。
が、初見をこのペアで見ると物語の恐怖が倍増してしまうのでは……と、尾上廣瀬ペアでスリルミーを初見する見知らぬ誰かのことを心配してしまいました。

 

結果的に言うと、今年の3ペアはどれも異質なのかなと感じますが、こうして振り返ると私が見た6ペアのうち、“スタンダードなスリルミーの型“を再現しているのではと感じるのは2021年の松岡山崎ペアくらいで、

そういう意味ではどのペアも異質で、それぞれ唯一無二の魅力があり、どのペアが初見になったとしても、それがその人のスリルミー観を決定づける”運命のペア”だったんだな、ということです。

 

私は松下柿澤ペアが初見だったおかげで、同体格で対等なシンメペアに囚われてしまっており、そういう点も含めて今年の木村前田ペアはドンズバに刺さりました。

 

 

せっかくなので簡単に今年の各ペア所感。
(今更ですがこの文章は、前田公輝さんのオタクであり、それ以前に2019ロミジュリのおかげで廣瀬さんと達成くんに対してとても思い入れがあるミュージカルオタクが書いています。)

 

■木村前田
この2人のスリルミーが見られたこと、本当に本当に幸せでした。
2021ロミジュリで出会って、飛びぬけた演技力のとりこになってしまった公輝くんと、2019ロミジュリ以降、お芝居も歌もお顔も凄く好きな役者さんで、出演作を何本も見に行っている達成くん。
夢みたいな組み合わせだし、きっと相性が良いだろうと感じていた直感はやはり当たっていて、見たことのないスリルミーの世界に連れて行ってくれました。
2人の繊細な表現と緻密に計算され組み立てられたお芝居はそれぞれ芯が揺らぐことはなく、でも2人ともその時の相手の感情や空気を受けて返すお芝居もとても上手だから、この2人から紡がれる物語の印象は観劇する度に毎回違って、幸運にも何度も見ることができて本当に楽しかった。

 

今回のスリルミー出演が決定する前から見たいと願っていた、公輝くんの「スポーツカー」と「死にたくない」のパフォーマンスをこの目で見られたこと、本当に幸せでした。
(これはまさか5日後に本当に前田彼の情報解禁がされるとは思わずに妄想ツイートしている頃の私。)

優しくて周囲の人のことをよく見ている公輝くんだからこその、繊細で壊れかけた姿を必死に覆おうとしている、そんな危なげな姿がひどくいびつで魅力的な光を放つ蠱惑的な前田彼が完成されたのだと思います。

 

たつなりくん、今まで見たことのない新しい姿を見ることができてとても楽しかった。

やっぱりお芝居も歌も上手くて好きだし、顔も大好きだし、でもその大好きな顔をあんなに恐ろしく感じることもあるんだな、ということが知れたのも面白い経験でした。「死にたくない」であんなに全開笑顔の”私”、初めて見たよ。怖すぎます。

たつなりくんは、どんな作品でもたつなりくんにしかできない強烈な役の表現を残していかれるなあと何度か拝見して勝手に思っていますが、今回もたつなりくんだからこその強烈な"私"になっていたなと思います。

今回を通して更に好きな役者さんになってしまったので、早く次の出演舞台が発表されないかな〜と、心待ちにしています。

 

もともと好きな役者さんたちなので、素のお2人のエピソードももっと聞いてみたいなあと思います。今度はまえださんFCのラジオにたつなりくんがゲスト出演していただけませんか?

 

 

■尾上廣瀬

廣瀬彼、怖いんです、怖いんですが、最後の「レイ」と呼ぶ声は驚くほどやさしくて、ああ、昔の"彼"は、"私"のことをこんな風にやさしく呼んでいたんだろうな、と感じました。

尾上私は、壊れてしまった廣瀬彼に、昔の姿に戻ってほしくてあんなことを企てたのかもしれない、と思ってしまいましたし、そうだとしたらそこにあるのは愛だよな、とも。

 

私は廣瀬さんのティボルトが大好きですし、本当にかっこいいめろめろめろと思ってその後の出演作も何本も見に行かせていただいていて、今回の彼役での出演も、聞いた時から「絶対に似合いそう!!」とずっと楽しみにしていました。それがまさかあんな恐怖強めの"彼"をお出しされるとは……。

でも千穐楽で見た時には少し人間味も感じられるお芝居になっていて、「めろ」くらいは感じる余裕がありました。

あの低くて艶のある素敵な声と恵まれた体躯から放たれる、ベルベットのようで圧のある色気。

恐怖も色気も歴代最強の"彼"なのでは?と勝手に感じました。

 

松也さん、振り返るとわたしは今まであまり出演作を拝見する機会がなかったなあと感じますが、表現の巧みさはさすが歌舞伎からミュージカルや映像など様々な場で活躍されている方だなと思いました。

特に声の使い分け。54歳の”私”、19歳の”私”、護送車の中の”私”、その声の使い分けは見事で、どれも違った響きに聴こえて、よりその時の”私”の状態が伝わってきます。

また、女形もされていらっしゃるからなのか、松也さんの"私"はお淑やかな品があるなあと感じました。東京公演で見た時はギークっぽいな、と思ったのですが、千穐楽で見た時は深窓の令嬢といった雰囲気でした。

 

 

■松岡山崎

配信で見ます!!!!!!!

→見ました。(11/5)

2021のこのペアへの個人的な印象は、「見た目はスマートだけど中身はわがままでこどもっぽい"彼"に振り回され続ける、見た目も中身も未成熟の"私"。ぞんざいに扱われ続けて破裂して道連れにしてしまう。」という感じだったのですが、今年は全く印象が違いましたね。

松岡私が賢くて我が強く理性的な人間になっていて、山崎彼は繊細さの表出が強くなっているように思いました。

2人は対等で唯一無二の友人関係だと感じましたし、それぞれ優秀すぎるが故の生きづらさを抱えつつも、お互いがお互いの居場所になっているなという印象をわたしは受け取りました。

だからこそ、どうしてこんなことをする必要があったのか、彼を手に入れるためにここまでする必要はなかったんじゃないか(だってすでにお互いがお互いの居場所だったから)、と感じてしまって、そのやるせなさが独特の後味の悪さ、切なさになっていました。

「"私"が彼に対して犯した罪」の側面を強く感じたという点では木村前田ペアもそうでしたが、他の選択肢もあっただろうにどうしてこんなことに、と思わされたのは、今年の松岡山崎ペアが私的歴代No.1でした。

同じふたりが演じてもこんなに印象が変わるなんて、本当にこの作品の魅力は底が知れませんね。

 

 

私がスリルミーという作品の魅力に気づいたのって、2019の時に見た松下柿澤ペアと成河福士ペアの印象があまりにも違ってかけ離れていたから、も理由の1つなので、各ペアを見比べられるチャンスがあるならそれを逃す手はないなと思います。

配信していただけるだけでも有難いのに、1週間もアーカイブも見られて本当に有難くて楽しみですね!!皆さんどうぞ更にスリルミーの魅力にハマってください!!

 

horipro-stage.jp